大判例

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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)147号 判決

夫が建物を賃借し、これに夫婦が同居している場合には、特段の事情がないかぎり、妻は夫の建物居住権したがつてその占有権に依拠して建物に居住しているものであつて、妻に独立の占有はないものというべきである。そして、このことは、妻がその名義で営業を営み、建物を店舗として利用している場合であつても変りはない。この場合でも、妻は妻たるの地位にもとづき、夫の賃借権ひいて占有権を援用して建物を自己のために利用しているものと認むべきだからである。もし、これを否定するときは、建物賃貸借は無断転貸を理由として解除されうることを肯定せざるをえないであろう。しかしながら、叙上認定の事実に見るように、被控訴人は夫が女道楽で外泊が外く、家業にも失敗したため、同人との間が漸次円滑を欠くにいたり、昭和三三年一二月九日独断で家主たる控訴人の承諾をえたうえ、本件建物において麻雀営業を営むことの許可申請し、翌昭和三四年一月二一日その許可をえ、爾来被控訴人のみでその経営をし、その間夫はいよいよ外泊の度がはげしく、昭和四二年正月頃から全く帰宅せず、夫婦関係は破綻して昭和四四年春頃遂に離婚の調停事件にまで発展しているのであつて、このように建物賃借人たる夫が多く外泊して建物に常住せず、夫婦関係が正常を欠くにいたり、ために被控訴人が自ら建物内の営業主体となつて独自にその経営に従事し、控訴人もその情を知つて被控訴人の営業開始に同意を与えたような場合には、控訴人は夫の賃借権に関係なく被控訴人に建物の独自の使用を許したものであつて、被控訴人は建物につき独立の占有権を取得したものと認めるを相当とする。

三、以上の次第で、被控訴人は、本件建物につき占有権を有するものであるから、控訴人の猛に対する債務名義に基づく本件強制執行の排除を求め得ることは明らかで、本訴請求は正当というべきである。

(長谷部 鈴木信 石田実)

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